友人と一年ぶりに日本橋で会うことになり、ちょっと足を伸ばして薬研堀の『大木唐からし店』へ。ここの七色唐がらしを、手土産にしようと思ったのです。ところがガーン。店の戸にこんな張り紙が。「当店は七月三十一日をもって閉店しました」
コロナ禍が、こんな小さな老舗も飲み込んだとは。この大木屋の創業は明暦二年(1656)。その翌年一月に、江戸の大半を焼いた明暦大火が起こっているから、たぶん大木屋も延焼したでしょう。
この火事の教訓で大川に両国橋が架けられ、両岸に両国広小路という火除け地ができたのだから。大木屋はこの西側の広小路にあり、長きに亘って七色唐がらし(七味の呼名は上方のものだそう)を、江戸・東京の多くの名店や、ファンに送り続けてきたのです。