先日の真夜中のこと。寝ぼけ半分でトイレに起きて、ギョッとしました。く、蜘蛛! 正面の壁に張り付いてるのは、足が異様に長く、全体が大人の手のひら大に見える茶色の巨大蜘蛛。むむ、こんなの見るのは、学生時代に奈良の古い下宿で遭遇して以来です。慌てでゴキジェットを火炎放射器よろしく噴きかけるも、逃げられた。でも、いずれ助かるまいとその夜はそのまま寝て、翌朝こわごわ調べてみると、何と、空になったトイレブラシ用の壺に、じっと潜んでいるではないですか。そこで壺ごと玄関の外に出し、火挟みで、近くの草地に追いやったけど・・・。
さらに一昨日、食べかけのケーキを机に置いたまま、しばらく席を離れて戻ると、ケーキに蟻ん子が黒山のように群がっています。すぐビニール袋にケーキごと蟻の群れを放り込んで、ぎゅっと袋の口を縛る。机上に逃げ散った蟻にはアリアースを噴射。なお床を行列している蟻は、掃除機で吸い取った。総毛立っての、汗だくの奮闘でした。
なぜ最近になって、こんなワイルドな事件が連発したのか。網戸を外していたからです! 我がマンションは、十何年ぶりかの大規模修繕工事の最中で、お達しにより、網戸は全て外していたのです。おかげでベランダ、寝室、仕事部屋など、すべてのガラス戸を閉ざしたまま二ヶ月半。三階とはいえ、うっかり開けておくと何が入ってくるやら。毎日の空気の入れ替えは、ごく短時間に限っていたけど、今年の五月は蒸し暑く、だんだん大胆に、長く窓を開けていたのでした。
この地球温暖化の現代、網戸のない生活なんて考えられない。そう言う人は私に限らず多いけど、ちなみに、そんな“贅沢”を言ってるのは、どうやら日本人だけらしい。海外のほとんどの国で、網戸はないそうです。虫の多い中国、イタリアも、一年中はだ寒くて虫が少ないフランス、ドイツ、ベルギーも。総じて網戸があるのは、アメリカだけだそう。
考えてみれば日本も、数十年前までは、防虫具といえば“蚊帳”と“蠅取りリボン”だったんですよね。そんな伝統を打ち破って網戸が踊り出たのは、アルミサッシや防虫網が開発された、経済の高度成長期からといいます。ウオシュレットと網戸の開発で世界に先んじたのは、日本人の国民性でしょうか。清潔好きで一日に三回は入浴したという江戸っ子や、蚊帳の情緒を怪談や浮世絵に託した江戸の人々が浮かびます。
そして六月を目前にして、網戸が戻りました。
全部の窓に網戸を嵌め、一斉にガラス戸を開くと、何ていい気持ち! 幾筋もの風が家の中を吹き抜けて、気分がスウッとしました。今まで網戸の恩恵など、改めて考えもしなかったけど、こんなにも日常の暮らしを守り、潤すものだったとは。さりげなく窓に嵌って風や光や音を通し、でも通さない物がある。網戸の向こうは異界です。たかだか網一枚だけど、あちらから押し寄せる多くの災厄を防ぐものが、網戸でしょうか。
それはこの世と異界の、“結界”と言えるかもしれません。
ところで。網戸はあるべき場所に収まったものの、点検してみると、思ったよりあちこち傷んでいます。網の破れ目に、絆創膏を貼ってる部分さえあったりして。我が家の結界は、何とぼろぼろだったのでした。
そこで施工業者の提案に応じ、全ての網を張り替えることに。で、六月半ばには、再び網戸は外されます。とすると、またまた巨大なあやつが入ってくるのでしょうか。トホホ・・・です。
※図鑑によれば、家に侵入したのはたぶんアシダカグモで、どこの家にもいるのだとか。大きくて見た目は怖いけど、ゴキブリを食べる益虫なので、殺したり追ったりしない方がいいそうだけど、うーん・・・。
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濵野 智 (金曜日, 07 6月 2024 17:34)
西大寺ではナメクジでした。