ロイヤルウエディングがあった日の深夜、NHK・Eテレで放映された「女王陛下の戴冠式」。これが面白くて、ちょっとのつもりが最後までつい観てしまい、寝不足に-----。BSでも二度オンエアされたから、観た方も多いでしょう。
エリザベス女王の即位は二十五歳でしたが、戴冠式は、満を持してその二年後に。ウエストミンスター寺院での式の模様は、全世界にテレビ中継されました。
その当時のフィルムを、六十五年後のいま、再放映する----というのなら並のドキュメントです。この番組は、九十二歳になられた女王が、バッキンガム宮殿内でそれを御覧になりつつ、王室研究家によるロングインタビューに答える-----という大胆な仕掛けです。
記録された大式典の壮麗さ、二十七歳の女王の輝くばかりの美貌。それはもう目を瞠るばかりですが、面白かったのはやはり、老女王の、生のコメントでした。在位六十七年を刻んだ威厳に満ちたお顔で、クスッと笑えるジョークを、何げに口にされるんですから。
ウェストミンスター寺院(右)とビッグベン(左)
エリザベス女王の肖像画が描かれた英国紙幣
例えば__。
女王の前には、戴冠式で被ったという「エドワード王冠」が置かれており、これが二キロもあるという重量級。この王冠を頭上にされた時のご心境はいかに------と質問されて、
「重たくて、うっかり頭を下げれば王冠が滑り落ちるか、首の骨が折れるかと----」とニコリともなさらず仰せられた。
また、戴冠席で、こまごま女王のドレスに気配りする大司教(?)について、質問者が「××司教もつつがなく大任を果たされ-----」などと讃えると、真面目に「あら、あの人、私のドレス係じゃなかったの」
この時、インタビュアーの顔は映ってなかったけど、現場ではちゃんと笑って差し上げたでしょうね。
何しろ女王のお顔って、やはり常人のものではない。笑顔になれば愛嬌と美しさに満ちるけど、そうでない時は、表情を鉄仮面ばりに押し込めておられます。そんなお顔でギャグを発せられれば、歴戦のインタビュアーでも少しビビるかも、と余計なことを考えたりして。
画面には、その戴冠式に出た人の裏話も挿入されています。
女王の、あの何メートルも引きずる壮麗なマントの持ち役となった四人は、伯爵や公爵の令嬢ばかり。その一人(今は八十半ば)が、あの時は極度の緊張と、体を締めつけるドレスのきつさに、失神寸前だった----と述懐しています。
何とかというお方は、戴冠式のリハーサルに出た時、つい何か、チクリとした戯れ言を口にしてしまった。すると、それを聞きつけた宮廷の係員が飛んで来て、耳元でこう囁いたと。
「旦那様、ロンドン塔にはまだ、空き部屋がございますよ」
日本でもいつか、こんな番組が作られないでしょうかね。
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