▲トップ写真2枚は、森真沙子の代表作『箱館奉行所始末』にちなんで「箱館五稜郭祭」で行われる維新パレード。詳細は箱館五稜郭祭ホームページで。4枚目写真は、豊国「吾妻橋夕涼景」国会図書館デジタルコレクション
森真沙子の新シリーズ『大川橋物語』。物語の舞台は、隅田川に架かる五橋のひとつ大川橋(通称、吾妻橋)近くの接骨院「名倉堂」。この接骨院を営む元武士の一色鞍之介が主人公です。
大川橋が人々の往来で賑わったのは文化文政期。時あたかも町人文化の最盛期、江戸歌舞伎、大相撲、落語などが隆盛を極めました。この時代を背景に、接骨院「名倉堂」にやってくる多士済々の客と鞍之介の織り成す物語。第2巻がまもなく発売です。
「名倉流の骨つぎ師になって、人のために尽くしたい」と鞍之介を訪れたのは、旧知の千尋だった。しかし、看護人としての高い評価を得られた矢先、姿を消してしまう……。鞍之介の脳裏には十年前、闇に葬った声が蘇ってくる『あれは土砂崩れじゃない!』「怪し川」と呼ばれた因縁の川にまつわる秘密を千尋は知ってしまったのか?そして千尋の想い人の正体とは?(第三話より)
◎二見時代小説文庫/850円(税別)
本のご購入は、オンライン書店
または楽天ブックス☎0120-29-9625
『大川橋物語1名倉堂一色鞍之介』 絶賛発売中
大川橋近くで開業したばかりの接骨院「駒形名倉堂」を仕切るのは二十八歳の一色鞍之介だが、苦しい内情で人でも足りない。鞍之介が命を救った指物大工の六蔵は、暴走してきた馬に蹴られ、右手の指が動かないという。六蔵の将来を奪ったのは「名倉堂」を目の敵にする「氷川堂」の診立て違いらしい。破滅寸前の六蔵を鞍之介は救えるか…。(第1話「最後の一手」)
★ブログ「新シリーズは「大川橋物語」― 名倉流骨つぎ師、江戸を生きる」も合わせてご拝読を。
◎二見時代小説文庫/800円(税別)
本のご購入は、オンライン書店
または楽天ブックス☎0120-29-9625
読者からお便りが届きました
東京都 淺野 聡さん
「柳橋ものがたり」の7巻では、北町奉行所に赴任した直後の小出大和守の活躍が描かれています。昨年(2023年)夏にあることがきっかけで偶然手に取った文庫本でしたが、北海道に縁のなかった私には蝦夷といっても「あんな僻地で、熊のお世話でもなさっておられたの」(「柳橋ものがたり」ペリーさんの拳銃の章より)といった認識が私にも当てはまるほど全く蝦夷の知識が及んでいませんでした。ただ、その章は想像以上におもしろくとても印象的で、その後森先生が函館育ちと知り、よし次は「箱館奉行所始末」だ!と思い、このたび楽しみに手に取りました。
繰り返しになりますが、私は北海道には一度も行ったことがなく地理感もありません。お城は好きですが五稜郭については、幕末の小説に散見される程度の知識しかありませんでした。ですので、スマホで函館のマップを見ながらの格闘となりました。
さて、「箱館奉行所始末」の感想ですが、読み始めは単に一人の青年役人の成長記のような内容なのかと思いましたが、章が進み巻を重ねるごとにぐんぐんと引き込まれました。
それは、卓越された表現やストーリーもさることながら、森先生の経験に裏付けられたリアリティによるところも大きいと思いました。繊細にして精緻。自然との調和。それらが厳寒の中での生活をいっそう際立たせてくれています。
また、北の防人の重要性を歴代奉行の資質が物語っているところも読みごたえのある内容です。
最終巻は衝撃的で、深く考えさせられるものがありました。というより、”突きつけられ”ているような思いで拝読しました。
風雲急を告げる、善悪の基準すらわからないような混迷の中、自分がもし主人公・幸四郎の立場であったなら、この非情な現実をどのように受け止め振舞うであろうか。
歴代奉行が貫いた日本人の道。
榎本武揚が与えた大儀。
守るべき武士の一分。
使命を果たす戦いなのか、死に場所を求める歩みなのか。
本当に、大河ドラマにしてもらいたい名作だと思いました。
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